エンジン始動前の安全確認
操作装置の位置周囲の安全を確認しないままエンジンを始動すると、機械の損傷や人身事故が発生する危険性があります。エンジンを始動する前に次のことを確認します。
●機械の内部・外部・下部に障害物が無いか?人がいないか?
●機械の各部を見回し、部品を取り外した箇所がないか?
●「運転禁止」「整備中」などの警告札が掛かってないか?
●レバーやペダルなどの操作装置が正しい位置にあるか?
クレーンは水平堅土上に設置する
クレーンを傾斜地や軟弱な地盤の上に設置すると、傾いたり転倒したりします。必ず、水平な堅土上に設置する様にします。
やむを得ず軟弱な地盤に設置するときは、転倒を防止する為に十分な強度と
大きさの敷板や鉄板をゼネコンより用意してもらい地盤を補強しなければいけません。
クレーンは水平に設置する
クレーンが傾いてると、安全強度が低下し、実際の吊り上げ能力も小さくなり転倒事故の原因になります。レベルゲージを見ながら、機体が水平になるように設置します。
アウトリガー設置状態を確認する
アウトリガ-の設置状態が悪いと、機械の吊り上げ能力が低下するばかりでなく、転倒の原因になります。とくに次のことに注意し確認します。
●アウトリガ-ビームがロックピンで固定されていること。
●タイヤが地面から離れていること。
●すべてのアウトリガ-が地面に接地していること。
定格総荷重を超える荷はつらない
定格総荷重を超える荷を吊ると、機械に過荷重が加わり、機械が壊れたり転倒事故を起こす原因になります。作業前に、必ず定格総荷重表で吊り上げ荷重を確認します。吊り上げ能力はブーム長さや作業半径などにより異なります。
いかなる場合でも定格総荷重を越えないように注意します。
●定格総荷重=定格荷重+吊り具荷重
荷を吊り上げる前の確認
荷を吊り上げる前の確認を怠ると、荷の落下、ブーム及び機体の損傷、転倒などの重大事故が発生するおそれがありますので次のことに注意します。
●吊り荷の重量が定格総荷重を超えていないか?
●巻き上げ用ワイヤーロープの掛け数は、定格総荷重表に記載されている標準掛け数か?
●玉掛けワイヤーにより荷の重心を吊っているか?
●ワイヤロープは垂直になっているか?
●地切りした後、巻き上げを一旦停止させ、荷の振れを止め、荷が安定しているか確認してから巻き上げます。
玉掛けは確実に
玉掛けを確実にしないと、吊り具から荷が抜けたり外れたり、また、位置がずれたりして荷が落下します。次のことに注意して行ってください。
●玉掛けは有資格者が必ず行ってください。
●玉掛けのワイヤーロープやチェーンなどは、適切なサイズで損傷のない物を使用してください。
●フックには外れ止めが付いてます。正常に働くかないと、吊り具がフックから外れて荷が落下しますので注意して確認します。
●玉掛け用具は荷物の所有者が点検して用意してください。
荷を吊ったまま運転席をはなれない
荷を吊ったまま運転席を離れることは禁止されています。
運転席をはなれる場合は荷を地上に降ろし次の措置をとります。
●全てのブレーキおよびドラムロックを作動させる。
●全てのクラッチを切り、レバーを中立にする。
●エンジンを停止してキーを抜き、運転席のドアをロックする。
わき見運転などの禁止
クレーン作業では、わき見運転など、ちょっとした油断やささいなミスが大きな事故につながります。作業中は、合図者や吊り荷から目を離さず運転に集中します。ブームや吊り荷を周囲に人や構造物に当てない様気をつけます。
合図に従って作業する
合図者や玉掛け者などとの間で適切な合図が行われないと作業能率の低下だけでなく事故につながる危険性があります。運転士は、作業前に作業指揮者・合図者・玉掛け者などと十分な打ち合わせをおこない、合図者の指示で確実な運転を行います。
●合図者必ず1人で行ってください。
強風時は作業を中止する。
瞬間最大風速が10m/s以上の強い風が吹く時は、
作業を中止して荷を地上に降ろしブームを縮小します。
落雷の恐れがあるときは作業を中止する。
落雷を受けると機械各部に損傷を受けるだけではなく、運転者や機械の周囲の人達が負傷する恐れがあります。落雷の恐れがある場合は作業を中止してブームを縮小します。
合図には、手、手旗等、様々な方法が用いられています。また、必要に応じて無線機が併用されています。
合図で最も重要なことは、 移動式クレーンの運転士がためらうことなく、安全に操作できるように明確で的確な指示を行うことです。
運転の合図
事業者は、移動式クレーンを用いて作業を行う時は、移動式クレーンの運転について一定の合図を定め、合図を行う者を指名し、その者に合図を行わせなければならない。ただし、移動式クレーンの運転者に単独で作業を行わせる時は、この限りでない。合図者の指名を受けた者は、移動式クレーンの作業に従事する時は、定められた合図を行わなければならない。 作業に従事する労働者は、 その合図に従わなければならない。
●クレーン等安全規則第71条
本条は、事業者が合図を行う者を指名し、指名を受けた者が合図しなければならない。
移動式クレーンの単独作業の場合は、合図を行う必要がないと規定したものである。
移動式クレーン等の運転についての合図の統一
特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われる場合において、当該作業がクレーン等(クレーン、移動式クレーン、デリック、簡易リフト又は建設用リフトで、クレーン規則の適用を受けるものをいう。)を用いて行うものである時は、当該クレーン等の運転についての合図を統一的に定め、これを関係請負人に周知させなければならない。 特定元方事業者及び関係請負人は、自ら行う作業についてクレーン等の運転について合図を定める時は、統一的に定めらた合図と同一のものを定めなければならない。
●労働安全衛生規則第639条
本条は、関係請負人( 協力会社 )の合図が事業主が定めた合図と異なる場合は、事業主が定めた合図を関係請負人に周知させ、従わせなければならない。関係請負人や労働者は、その指示に従わなければならないと規定したものである。ただし、 特定元方事業者は、法律又はこれに基づく命令に違反する指示は行ってはならない。特定元方事業者とは、同一場所で行う事業の仕事を請け負わせている事業者をいう。 関係請負人とは、 元方事業者の仕事を請け負っている請負人や協力会社をいうものである。
合図の方法
移動式クレーンの運転士に意思を伝える合図には、手、旗、笛、無線機等がある。 手による合図は、用具を一切必要としない手軽さもあり、広く用いられている。合図で最も重要なことは、定められた合図を定められた合図者によって節度を付けて大きく明瞭に行うことである。合図を行う者は、 運転士の見える位置にて運転士の 方向を向き、はっきりとした動作で合図を行わなければならない。 なお、指定された者以外の合図や複数の者による合図は、ク移動式レーンの操作を誤る要因となるため行ってはならない。
合図は、定められた合図者が行う
合図は、節度をつけて明瞭に行う
合図は、運転者の見やすい位置で行う
合図は、安全な場所で行う
手による合図の補足説明
移動式クレーンの運転士から見える位置で運転士の方向を向き、明確な合図を行う。
微速は、運転士に小指で「ゆっくり」という合図を示した後、巻上げ又は巻下げの合図を行う。
笛を併用する場合は、笛をピッと吹いて小指を示す。
腕を横に水平にとは、腕を前方ではなく、腕を広げるように横に水平近くまで上げる。
手をあげて輪を描くとは、手首を回すのではなく、腕で輪を描く。
右旋回、左旋回と声を掛ける合図の場合、運転席の運転士の右側を右として指示する。
したがって、運転士に向かい合っている合図者がジブを右に旋廻させる場合は、運転士に左旋回と声を掛ける。
笛による補助合図の補足説明
笛による合図は、はっきりと聞き分けられるように吹く。
笛の補助合図
巻上げ及び巻下げの笛の合図の覚え方
旗による合図
旗による合図は、合図者と玉掛作業者間の距離が離れている造船所等で使用されている。
声による合図
合図に無線機を使うことも多く、 声による合図が多く用いられている。
ほとんどが誰にでも判る一般用語が用いられているが、一部には専門用語を使用している事業所もある。

ゴーヘイの語源は、つり荷を巻上げる「巻け」の合図を意味するgoaheadから来ている。スラー(スライともいう。)は、 「 下げ 」を意味する slack way や slacken が変化したものである。これらの用語は、単独で用いられることもあるが、「オヤスラー、コゴーヘイ」のように組み合せて用いられている。「オヤスラー、コゴーヘイ」は、ジブを倒しながら巻上動作を行う荷の水平移動の合図になる。巻上装置の主巻用フックを親、補巻用フックを子というが、 この場合の「オヤ」はジブ動作を指し、「コ」はフックの動作になる。したがって、ジブを起こしながらの巻下動作は「オヤゴーヘイ、コスラー」となる。鉄骨ボルトの穴合わせ等では、チョイスラー等の移動量用語が加わる。
クライミングクレーンやケーブルクレーン等は、移動量用語としてノッチを用いて指示したり、巻上げをアップ、巻下げをダウン、停止をストップと指示することがある。また、 ジブの起しをヘッド、倒しをテール、ジブの停止をラック、旋回の停止をトラベルという場合がある。その他に、ジブが行き過ぎた時には「すぎやま~」という。英語圏の国では、次のような合図が用いられている。